2019-09

スポンサーリンク
頑蘇夢物語

一四 敗戦の原因(五)

本日(九月三日)棚の上の古い箱を引出して見たところ、十九年の七月頃、当所―双宜荘ーに滞 在したる頃の若干の書類がはいっていた。いま試みにその中の一、二をここに掲げて置く。 自分と東條前首相との関係については、別に語る所があるが、昨年七月一日、家族は熱海の晩晴 草堂より沼津を廻って、御殿場で予を待ち受けしめ、予は塩崎秘書を伴い東京に赴き、東條首相に 面会し、そ...
頑蘇夢物語

一三 敗戦の原因(四)

極めて端的に申上ぐれば、今上陛下は、戦争の上に超然として在ました事が、明治天皇の御実践 遊ばされた御先例と、異なりたる道を、御執り遊ばされたる事が、この戦争の中心点を欠いた主な る原因であったと拝察する。これについては輔弼の臣僚たる者共が、最も重大なる責任があること と信じている。恐れながら、予は客観的に、歴史家として、今上陛下について一言を試みて見たいと思...
頑蘇夢物語

一二 敗戦の原因(三)

話は少し前に遡るが、満洲事変は、竹藪から出た 筍 ではなくして、縁の下から畳を持上げて、 座敷の真ん中に飛び出したる筍のようなものだ。物事が筋道が通って、当り前に運べば、陸軍の数 名の佐官級の将校が、これ程の大事を仕出かす筈はない。しかるに無理に無理を加え、圧迫に圧迫を重ねた結果、勢の激する所、ここに到ったのである。それは大正から昭和の初期に至る迄の日本 の...
頑蘇夢物語

一一 敗戦の原因(二)

昭和二十年九月二日、今日は愈々米国戦艦ミズーリ号上にて、聯合軍と日本代表者との降伏調印 の日である。これを前にして、重光外相は、懇々切々日本国民が、敗戦国民である事実を自覚せん ことを要望している。これは今度に限ったことでもなく、裏にも重光外相は、同様の言を為し、そ の為めに米国側では、流石に重光外相だと、讃辞を呈している。だが、我等はこれを聴いて、異様 に...
頑蘇夢物語

一〇 敗戦の原因(一)

今更敗戦の理由なぞということを詮議しても、死児の齢を数うると同様で、一寸考うれば、無益 のようだ。しかし若し日本国民が往生 寂滅せず、短かき時間であるか、長き時間であるか、後に は敢て大東亜征戦頃といわざる迄も、せめて明治中期頃の日本に立ち還り、若くは立ち還らんとす る希望が、全く消滅せざるに於ては、この詮議ほど大切なるものはない。殊に不肖予の如きは、こ の...
頑蘇夢物語

九 毎日新聞引退完了

さきに毎日新聞との関係を結了したと書いたが、それは自分側の考えで、相手側では、そう簡略 に行かず。尚お重役会議を開き、その決議を齎らし、高石会長が、八月二十六日大雨を冒し、阿部 賢一重役及び小松秘書を帯同し来た。予は当初何の為めに来たかを知らず。高石氏に向って、小話 の末、何ぞ御用談があるかと言ったところ、高石氏は、「実は本日重役会議の決議を齎らして、罷 り...
スポンサーリンク